日本経済新聞2022年10月25日掲載「投資に積極的な都市ランキング」によると、東京都区部や京都で貯蓄比投資割合が20%を超える一方、長野県の貯蓄費投資割合は5.9%となっている。全国平均の13.6%と比較しても8%ほど投資割合が低い。都市部や全国と比べ長野県で投資が伸びないのはなぜだろうか。
投資への関心はどうやって生まれる?
同記事によると、貯蓄比投資割合が高い地域の特徴は次の3つにまとめられる。
1つ目は、投資情報や金融知識が浸透していることだ。例えば東京都区部は投資情報に触れる機会が多い。また資産形成の知識を身につけており、金融リテラシーに自信がある人が多いことも、茨城県水戸市や三重県津市のように活発な投資に繋がる。
2つ目は貯蓄の年収比が高いことで、ランキング2位の京都は貯蓄の年収比が首位である。
3つ目は昔ながらの企業が多いことである。伝統的な企業が多数あることで、株式を長く保有して企業を支える文化が形成されていたり、相続で有価証券が受け継がれていたりする。
一方で預金を含めた金融資産水準が比較的低い都市は、資産を投資にまで振り向けにくい。
長野県の場合
長野の投資割合が低い要因のひとつに、人口流出が考えられる。
みずほ総合研究所のリポート(2018年)によると、東京圏など都市圏への人口流入に伴い、人とともに個人金融資産も地域に残らなくなっている。都道府県間の貯蓄額格差が、人口流出によって助長されているのである。
長野県も進学・就職などで県外に流出する人は多い。2017年には約20万人が県外に転出している。このような人口流出が個人金融資産の県外流出にも繋がることで、金融資産水準が下がり資産が投資にまで振り向けられにくくなっていると考えられる。
長野県の未来をつくる
長野県には老舗企業が多く存在し、スタートアップ企業も増加している。地域活性化のためには、長野県で暮らす人々が企業を支える文化を形成する必要がある。さらに人生100年時代に向けた老後の資産形成も考える必要があり、長寿県である長野県にとって金融の問題は今後さらに重要性を増してくると考えられる。
物価の高騰などで家計が圧迫され、投資に目を向けにくい状況ではあるが、将来の資産形成に向けた金融リテラシーを身につけておきたい。2022年度から高校家庭科に金融教育が入るのも、地域の金融リテラシーを考えるひとつのきっかけになりそうだ。