新日本科学は1日、医薬品の動物実験などの非臨床試験を受託するイナリサーチ(長野県伊那市)に対して、TOB(株式公開買い付け)を実施すると発表しました。この買収額は約27億円で、7月20日までに完全子会社化を目指します。
イナリサーチも同日に、TOBに応じることを発表しました。2日から7月13日まで、1株あたりの買い付け価格を900円と定め、株式を全て取得する計画です。これは、5月31日の終値637円に対して約4割のプレミアムを上乗せするもので、イナリサーチは新日本科学の完全子会社化後、東証スタンダードから上場を廃止する予定です。
新日本科学は、製薬会社から医薬品の安全性を細胞や実験動物で確認する非臨床試験の受託事業を手がける国内大手です。非臨床試験の受託事業は海外企業との競争が激化しており、今回の買収を通じて人材や実験施設などの経営資源を有効に活用し、両社の受託能力を強化することを狙っています。
新日本科学
1957年に創業された当社は、国内初の医薬品開発業務受託機関(CRO)として活動を開始しました。当初は前臨床事業に特化したCROでしたが、1991年に臨床事業に進出し、日本企業として初めて前臨床研究施設(1999年、ワシントン州)と臨床研究施設(2003年、メリーランド州)を米国に設立しました。
さらに1997年には、トランスレーショナルリサーチ事業部門を新たに設置しました。これにより、独自の経鼻投与技術を確立すると同時に、数々の大学発バイオベンチャーをサポートしてきました。その中でもハーバード大学教授らと共同で設立したWAVE Life Sciences Ltd.は、2015年に米国のNASDAQ市場に上場し、Pfizer社をはじめとする世界の大手製薬企業とライセンス契約を締結するなどの成功を収めています。
また、2004年には鹿児島県指宿市にあるグリーンピア指宿(厚生年金基金施設103万坪)を取得し、「メディポリス指宿」に改名しました。その後、「指宿ベイヒルズHotel & SPA」や「メディポリスエネジー」(地熱発電所)を開設し、メディポリス国際陽子線治療センターの事業支援も行っています。
さらに、2015年には臨床事業部門を分社化し、Pharmaceutical Product Development, LLC.(PPD社)と合弁会社、「株式会社新日本科学PPD」を設立しました。
イナリサーチ
イナリサーチは、中央アルプスと南アルプスに囲まれた自然豊かな長野県伊那市に本社を置く企業で、1974年7月の創業以来、品質と信頼性へのこだわりを持ち続け、その技術と知識を磨き上げてきました。主に医薬品開発支援の非臨床ステージにおけるフルサービスを提供していますが、向精神薬の依存性を調べる依存性試験など、高度な知識と技術を要する特殊な試験の実施も可能で、その点で世界的に認知されているCRO(Contract Research Organization)として知られています。近年では、グローバルに顧客を獲得し、海外売上げが全体の5割に迫る勢いで拡大しています。特に東アジア、そして韓国市場で強みを発揮しています。