パソコンに魅了された少年時代と「新しい仕組み」への情熱

私は小学2年生の時、父が買ってきたパソコンに触れたことをきっかけに、デジタルツールに強い興味を持ちました。小4の頃には自ら設定などをいじり始めていましたが、母がプログラマーだったことも少なからず影響していたのかもしれません。その後は情報系の高専に進学し、プログラミングに没頭する日々を送りました。エクセルで便利な計算シートを作成するなど、昔から「新しい仕組み」を作ることが大好きで、学生時代には学生会長を務めるなど、組織を動かすことにも関心がありました。
鉄鋼の現場で学んだ「プログラミング思考」と原体験

高専卒業後は、技術者として新日鉄(現・日本製鉄)に勤務しました。今でも一番の思い出として残っているのは、製品の端材として出るゴミをいかに減らすかという「歩留まり」の改善業務です。同期とのチーム研修として責任感を持って取り組みましたが、試行錯誤の末に成果を出したこの経験が、私の仕事における原体験となっています。現在の仕事でも、単にPCを使いこなすスキル以上に、問題を細分化して論理的に解決する「プログラミング思考」が大きな支えになっています。
結婚を機に移住、そして家業を継ぐ決意

長野へ移住したきっかけは結婚でした。当時は仕事が非常に多忙でしたが、結婚相談所を通じて現在の妻と出会いました。移住後しばらくは別の職に就いていましたが、父の「家業を継いでほしい」という真っ直ぐな思いや、「一緒にお酒を造ってみないか」という誘いに心を動かされ、酒屋の後継者として歩む決意を固めました。
コロナ禍の苦境で見出した「好みを広げる」仕組み作り

しかし、家業を継いで間もなく新型コロナウイルスが直撃しました。売上の9割を占めていた飲食店向けの卸売がストップし、売上は半分に。雇用調整助成金を活用して社員の雇用を守りつつ、事業再構築補助金で林業にも挑戦するなど、必死に生き残る道を模索しました。その中で注力したのが、日本酒やワインのオンラインショップと「定期便」のサービスです。お酒の好みは人それぞれですが、単に要望に応えるだけでなく、お客様がまだ知らない味に出会う「好みを広げるお手伝い」をしたいと考えました。一人ひとりの嗜好に合わせる運用は困難を極めましたが、そこは自身のスキルを活かして専用システムを構築することで克服しました。
お酒は手段。本質は「良質なコミュニケーション」の提供

私が働くうえで最も大切にしているのは、その仕事が「本質的かどうか」です。実は、私はお酒そのものを売りたいわけではありません。お酒を楽しむ「場」こそが本質であり、そこから生まれる「良質なコミュニケーション」を提供することを目指しています。私自身も日本酒が大好きで、奈良の「花巴(はなともえ)」などは自ら蔵元まで足を運ぶほど思い入れがあります。最近ではワインの仕入れについても日々勉強を重ねています。
迷ったら「面白い」方へ。直感を信じて進む未来

「鶏口牛後」という言葉を大切にしています。大きな組織の末端にいるよりも、たとえ小さくてもトップとして自分の意志を反映できる環境の方が、私には合っていると感じるからです。また、高専時代の恩師から頂いた「迷った時はどちらを選んでも後悔はある。なら、自分が面白いと思う方を選べ」という言葉も糧にしています。進学か就職かで悩んだ時もこの言葉を信じましたが、今もその直感を大切に、野本商店をより面白い方向へ導いていきたいです。今後は一般のお客様向けの店頭販売の強化や、通販のさらなる拡大に挑戦していきます。


ITの知見で伝統の酒屋に新風を吹き込む
システム構築と情熱で、良質な対話の場を創造する若き継承者