起業したいという想いは持っていなかった
大学4年次に周りが就職活動をする中で、単位を一つ取り忘れて卒業できないことが発覚しました。当時は企業へ就職したいという考えはありませんでしたが、半年の休学を経て大学へ通う中、働いている周りの仲間の影響で一度は就職してみようという想いが生まれ、卒業後ITベンチャー企業へ就職しました。
就職先では、ちょうど東京に新たな事務所をつくりマーケットを開拓していくという段階で、東京で働くことになったので、決められたレールに沿って仕事をすることが好きではなかった自分にとって、組織の中ではありますが自分自身でビジネスモデルを創り上げていくという経験は、後に創業する上でとてもよかったと思います。
大学院での経験
大学院へ通ったきっかけは、何か学びたいという想いやMBAを取得したいという強い想いを持っていたわけではありませんが、そこで学んだ経験はとても大きいと感じています。様々な社会人経験を積んだうえで、経営のフレームワークや理論的なことを学んだことで、ベンチャー企業や父と創業した会社で行ってきた我流のマーケティングや経営活動に納得感を持つことができましたね。また、30代半ばだった当時、年齢も職業もばらばらの20代から60代の同級生とひとつの教室で共に学び、繋がることができたという経験も大変面白かったです。
行動なくしては不安はぬぐえない、行動のゆえに気づいた魅力と課題
2004年にシソーラスの前身となる会社を創業して以来、大阪を拠点にしていましたが、ビジネスパートナーである弟が長野県を拠点としていたことに加え、長野県立大学の安藤理事長とのご縁もあり、2019年に長野県へ移住しました。移住の時を振り返ると、もちろん不安の気持ちはあったのかもしれませんね。しかし行動しなくては、その不安はぬぐいされないと思います。だからこそ、「とにかくやってみる」という考えで、一歩を踏み出すことができました。
長野市の魅力は、自然の豊かさや東京へのアクセスの良さなどいっぱいありますが、善光寺のお膝元としてのストーリーがとても魅力的で、私たちがやりたいことと大きな繋がりを持っていると感じています。善光寺の最古の仏像は決められた宗教があるのではなく、どんな宗教でも受け入れるお寺であり、昔から外の人である旅人などいろいろな人を受け入れる文化を持っています。この文化は、今後私たちが目指す、企業同士が競争し合い勝ち残っていくことではなく、地域課題を解決するための事業に向けて協働し合い、成長することに大きく通ずる部分を持っていると思いますね。
しかし、長野市は長野県の経済の中心地として長年やってきたからこそ、時代時代に合わせてできた様々なコミュニティが存在し、それぞれが独立していることが一番の課題であると感じています。だからこそ、NICOLLAPがそれぞれのコミュニティを繋げ、さらに魅力ある地域にしたいと考えています。
バングラデシュの可能性
バングラデシュを知ったきっかけは、安藤さんです。安藤さんのグローバルな世界観や物事を考える際のスケールの大きさにはとても感銘を受け、自身の考え方に大きな変化をもたらしたと感じています。
実際にバングラデシュを訪問した際に、若者が多く、これから人口が増える国としてのおもしろさを体感しました。成長率が世界で見ても高く、親日の文化を持つバングラデシュの若いエンジニアと直接話した時に、率直にとても楽しかったです。そして彼らのモチベーションの高さと話していて楽しい感覚に大変可能性を感じました。
育つ場づくりを大切に
コミュニケーションをとる上で、良いことも悪いことも包み隠さず腹を割って話すことを大切にしています。また、人材を育成する上では「とりあえずやらせてみる」ということを大切にしています。時には指示が曖昧だからと周りに怒られることもありますが(笑)
マニュアルを用意し、それに沿ってやらせるのはあまりやりたくないと思っています。私自身がそういうやり方でやってきたということもあり、失敗させることを目的としてはいませんが、失敗したら失敗したでケツを拭いてあげたらいいという想いで、自分自身で考えて何かを組み立てて仕事を進めていくということを軸としています。会社として失敗しても大きな損失にならないような仕事の領域をつくってあげて、経験させるという育つ場づくりを大切にしていますね。
向き合い、伴走する
私たちの企業は現場密着であると思います。コンサルティング企業に対して、頭のいい人が企業へ指導するというイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、私たちはお客様と対等な立場で仕事をし、お客様である経営者ときちんと向き合ったうえで、事業戦略を共に考え創り上げていきます。また、戦略をつくった後にその企業が行う新規事業の立ち上げや業務効率化、ITシステムの導入など、戦略の実行から成果が出るまで支援します。企業の事業戦略をきちんと創ることはもちろんですが、それを実行し、成果が出るまで寄り添い伴走することが私たちの強みであると思いますね。
家族のような存在である社員と共に
悔いが残ったという事はありませんが、社長になって苦労は常にしています。しかし、お客様とのプロジェクトが成功したときはもちろん喜びを感じます。また、長野に4年前に移住して、この場所で地域の人たちと関係性を広げ、異業種や異分野がリソースを出し合いながら事業を起こしていくオープンイノベーションが上手く組みあがった時に喜びとやりがいをとても感じます。
現在は、自社が長野のひとつのスタートアップのロールモデルになるということをモチベーションに、家族のような存在である社員と、株式の上場の実現、さらには、長野で私たちの経験を生かしたスタートアップ支援を目指していきたいと考えています。
より魅力的な長野を目指し、
「とにかくやってみる」と「気持ちに寄り添う」を軸に社会へ新しい文化と価値の提供に挑戦し続ける