スポーツ分野で働きたいという思いから
私がサッカーを始めたのは小学1年生の時でした。当時は野球が人気のスポーツでしたが、近所にサッカーを教えてくれるお兄さんがいたのが、サッカーを始めたきかっけです。その方の指導が良かったんだと思います。サッカーの面白さを教えてもらいました。小学3年生の時には、クラブに入って本格的にサッカーをするようになり、中学、高校とサッカー漬けの毎日でした。
その後、スポーツに関わりながら働くためにはどうすればいいのか考えた時に、具体的には体育の先生を想像することができたので、教員免許が取れる東京学芸大学に進学することを決めたんです。教員になるための勉強をしながら、プロサッカー選手を目指す、その両方を兼ねられる選択をしました。スポーツ分野で働きたいという想いはずっとぶれずにありました。
チームスポーツで学んだことを活かして
私がサッカーを通して学んだことはチームや仲間の大切さです。例えば、仕事をしている中でいろいろな人に「話を聞いてくれるね」とよく言われます。このように言っていただけるのは、私自身が多くの失敗した経験から、様々な情報を広く得て自分の力にしようと意識している結果だと思います。良好な人間関係を構築する上で人の話を聞くという体質になったことは、サッカーを通じて得ることができたスキルのひとつです。
サッカー選手は華やかな面だけではなくむしろシビアで辛い面も多く、失敗してもめげないという意味では、メンタリティを鍛えられたことも今に活きていると感じます。9歳と3歳の自分の子どもには、サッカー選手になってほしいとは特に思っていませんが、仲間と協力したり人と深く関わったりすることを経験してもらいたいと思っています。
チャンスをもらえたからには
2015年に社長に就任し、今年で8年目になります。サッカー選手を引退した27歳の時に自分でスポーツビジネスをやりたいと思っていましたが、思うようにはいかず東京の不動産会社で働いていました。スポーツ分野で働きたいという想いから、2012年に松本山雅に営業担当として入社しました。社長に就任が決まった2015年は、チームがJ1に初昇格が決まった前後ということもあったので、しっかりやらなければという責任感はありましたが、一方で社長という立場でしかできないこともあったので、チャンスをいただけてありがたいと思いました。妻には報告していましたが、思った以上にメディアで大きく報道されたので、とても驚いていましたが、いつも陰ながら応援してくれています。
地域に応援されるチームになるために
2018年にJ2で優勝し、二度目のJ1昇格を果たした瞬間はうれしかったですね。たまたま個人的に病気をしていた時期で、その年のシーズン半ばの4,5か月間、治療をしていました。自分の病気があったから、チームが優勝したらチャラになるな、と何か勝てる気がしていたんです。そうしたら本当に優勝できたので良かったです。今はそれ以上の喜びを求めて仕事をしているのですが、あの時は本当に嬉しかったです。
地域に応援されるチームになるために、サッカーの普及はもちろんですが行政やスポンサー企業の皆さんと協力をして、様々な地域貢献活動を行っています。地域へ恩返しをすることでより応援されるクラブになるというサイクルを目指しています。
一番の苦難は「今」
社長に就任してから一番の苦難に直面しているのは、まさに「今」でしょうか。応援してくれる人にとって、応援のし甲斐があるクラブであることが多くの人の喜びにつながるので、J3に降格してしまい申し訳ないという思いがあります。J3やJ2というカテゴリーに関わらず、熱く応援してもらいたいという思いはありますが、やはり松本山雅にはより高いカテゴリーで戦ってほしい、勝ってほしいというサポーターの方々の思いがあることも事実です。その思いをしっかり受け止めなければいけません。より高いカテゴリーでクラブを経営することにも向き合う必要があると考えています。
世界という大きな舞台に広げたい
個人としては、スポーツの発展のために、もっと世界やより大きい舞台で、スポーツビジネスに関わっていきたいという思いがあります。もちろん、地域に根差したクラブで、地域の皆さんにいかに関われるかということも大事な仕事ですし、それが楽しみにもなっていますが、より高い目標は、スポーツやサッカーを通じて世界へ繋がり、その影響力によってより良いものを世界に広げていく仕事をしていくことです。
Jリーグの理念にもある「国際交流」や「平和」、「教育上の人格形成」など、全てにおいてスポーツの関わり方が重要だと思っています。日本のスポーツ教育の概念も変化してきている時代で、スポーツビジネスをわかる人間がもっと発信・発展させていく方向に関わらないといけないと思っています。
「選手、地域、みんなのクラブだから、社長としての色は出さない」サッカー選手としての経験があるからこそチーム力を活かしたい