新たな方針
もう4年も前のことになるのですが、全社員に自分の想いを伝える機会がありました。それまでのサンクゼールというのは、量的な成長というのを求めていて、既存のお客様や既存の店舗の売上は下がっていました。見かけ上は、新規出店に伴い売上は上がっていましたが、内実は伴っていないという実状でした。そこに私は危機感を覚え、質をあげる経営をしようと思ったんです。そこで私は、2つの考えを伝えました。1つは、原点回帰をすること、もう1つは商品経営を進めていくことです。原点回帰というのは、両親がこの会社をスタートさせた時に大切にしていたおもてなしの気持ちを再確認し、愛のある食卓という言葉を真ん中に置いて事業をしようということです。私達の売上を支えてくれているのは、うちの商品が好きで何度も購入して下さっているお客様だと思うんです。そういったお客様にこそ私達は、エネルギーを注いでいくべきではないかと考え、定番商品、看板商品というものに力を入れて美味しさの絶対値を追求しようと思いました。売上が下がってもいいから、美味しさの追求をしようということで会社全体で商品経営に取り組んでいこうということを社員のみんなに伝えました。
将来の夢は学校の先生だった
私は、将来学校の先生になりたくて社長を継ぐ気は全くありませんでした。中学、高校の頃、父は家にいない日が多く、仲は良くなかったと思います。社会に出て稼ぐことの大変さや社長に就任して会社経営の難しさを知り、今ではとても尊敬しています。今はとても仲が良くて毎週日曜日は必ず家族で食事をするほどです。
会社の姿
その人が何に困っていて、何を望んでいるのかということを考え行動で示すことで、自分の誠意やその人に対する想いを伝えることができると思っています。これは会社のスタッフみんなで大切にしていることです。また、出来るだけフラットな会社でありたいと思っています。どんな背景の違った方でも活躍できるような平等な会社、チャンスが分け隔てなくある会社を常に目指しています。
社長として社員を守り抜く
私は4年前に社長に就任しました。就任直後にコロナが流行し先代の社長も経験したことのないくらい需要が縮小した異常事態で、会社が倒産してしまうかもしれないという危機感に襲われました。特に2020年の4月、5月は152店舗中100店舗以上が一時休業という形で2か月止まってしまい、2か月の間ほとんどキャッシュが入ってこないという最悪の状況に陥ってしまいました。ここで私が真っ先に考えたのは、スタッフのみんなを不安にさせてはいけないということです。私はスタッフのみんなに向けて「雇用はしっかりと守るから心配しないで下さい。今はこのような対策を考えているので、どうか不安に思わないでください。」と伝えました。また会社の数字をオープンにして会社の状況を共有し、みんなの不安を取り除く努力をしました。ここでもやはり、相手が望んでいることを真っ先にするという自分の中での軸を持ち、社員であったら今何をして欲しいのかを考えて行動しました。
社長自らのイチオシ
私の一押し商品は、いぶりがっこタルタルソースです。この商品は、私の商品経営というコンセプトを具現化してくれた商品で、世の中でブレイクしたものなんです。自分が方針を示して、それに共感してくれた仲間が行動して商品が出来上がるのってなんか、ものすごく嬉しかったんですよね。2018年のチャペルヴィンヤードプラスという赤ワインが一押しです。これは、1年樽で熟成させ、そのあと3年瓶の中で熟成させて今年の春に売り出したものです。これがフランスの「第16回ファミナリーズ世界ワインコンクール2022」で金賞を取り、日本の入賞酒で最も評価の高い、ワインであるトップオブザベストになることができたんです。これも私の商品経営のコンセプトを醸造メンバーが具現化してくれた商品です。その商品が評価され賞を取ることができ、とても嬉しかったです。
今後のサンクゼール
日本だけではなく、世界中でサンクゼールというブランドの名を広げていきたいと思っています。その結果、優秀な人材が集まり、それぞれのチームでプロジェクトが動き新しい事業が生み出されているような、イノベイティブな会社でありたいです。食品会社といえばサンクゼールと思ってもらえるような会社が理想です。
愛のある食卓を届けるための、美味しさの絶対追及
スタッフとお客さんに感謝の気持ちを忘れずに、これからも成長し続ける