10年間、理屈で生きてきました
正直、社会人としての環境はとても恵まれていました。収入や一緒に働いていた人、仕事の内容も社会貢献度の高いもので満足していました。大学も就職も理屈で決め、トータルで10年間の人生は理屈で決めてきた気がしていました。「理屈でやってきた10年はやりきった」だからこれからは理屈だけでなく、やりたいことをやると心に決めていました。
お客さんが来てくれるサービスとは
大学生になっていくつかのアルバイトをしてきましたが、一番楽しかったのがファミリーレストランで働いたことでした。今まで工学系の学校でシステムの勉強ばかりしていたので、人と接する機会にあまり興味を持たなかったことが大きな理由だと思います。バイト先のファミリーレストランには間断なくお客様が来てくださり常連のお客様とは挨拶を交わすようになりました。またスタッフ同士でも真剣にお店のために取り組んで働く仕事に、やりがいを感じることもできましたし、何より新鮮でした。なぜお客さんが途切れずに来てくれるのか?それが外食サービスに興味を持つきっかけとなりました。
いつしかファミリーレストラン巡りが趣味に
そこからファミレスが大好きになりました。休みの日には地元のファミリーレストランに行くのが日課となり、楽しみでした。何店舗かのファミリーレストランでアルバイトを経験し、それぞれのファミリーレストラン経営について学びました。気になるファミリーレストランがあると東京にまで行ってスタッフの接客の仕方や提供されているメニューが手作りなのかレトルトなのか、出されるまでにかかる時間もチェックして廻っていました。こんなに好きなら仕事にしたほうがいいのかも?とその頃から考え始めていました。
なぜスープなのか
今から思えば、25歳から29歳までやり続けていたファミリーレストランでのアルバイトは、会社を作るための勉強期間でした。サービス向上や人材育成を重視した経営なのか、商品開発に情熱を傾ける経営なのか。25歳まで飲食とは無縁の世界で暮らしてきた自分がこれから参入できる外食サービスは何か?と探していて最終的にスープ業界に的を絞りました。その頃スープ業界が話題になり伸び始めていた頃で、客観的に見てもこれはいけそうだ、と直感しました。理屈で考える癖が生きたのかもしれません(笑)ラーメン、カフェ、ハンバーグ、洋食屋の専門店が数多くある中でスープ専門店がまだ少なかったことも選んだ要因です。そして29歳でスープアンドイノベーションを設立しました。
1号店オープンの準備期間3ヶ月
通常、飲食店のオープンには数週間から一ヶ月程度という業界の常識の中、たっぷり三ヶ月の準備時間をかけて、一号店をオープンさせました。この期間はとってもよかったと今でも思います。社員、アルバイト教育にも一ヶ月かけ、レシピ開発には三ヶ月と十分に時間をかけました。オープンしてからの二ヶ月はメディアでも報道してもらえて話題になり順調なスタートでした。オープン後もレシピの開発をやり、メニューも変えていくようにしていました。しかし、三ヶ月後急にお客様が減り、その後半年間は売り上げがガタ落ちしてしまいました。
今でもあの半年間はトラウマです
オープンしてからしばらくの間のアンケートには「スープがぬるい」「味が濃い」といった具体的なご意見もいただいていました。今考えるとやはり開発が素人でとても恥ずかしいレベルだったと思います。スープの濃さや温度チェックをしないで料理の提供をしてしまうなど、忙しさにかまけ手を抜いていたことが要因です。このことはとても反省をするきっかけになりました。この半年間はトラウマでもありますが、この経験がその後にどんなに大変な時期があっても乗り越える自信につながっています。
空調は10分おきにチェック
学生の時にプログラミングを勉強していたからでしょうか、ちょっとしたことでも気になる習性が身についています。スープの提供も細かなところまでチェックするようになりました。ずっと続けているアンケートもしっかり店づくりに反映させています。特にスープの味に影響の大きい空調は10分おきにチェックし、室温管理にはとても気を使っています。レシピ開発も専門家がほとんどいないスープ業界。自分がやり続けたことで結果的に一番詳しくなっているので今でも全てのレシピを自分で考えています。こうして経営の挽回を図ってきました。
経営の安定化への決断
経営の安定化を目指す過程で第三者から出資していただくという選択をしました。株式比率や発言力が減るかもしれませんが、これで会社を安定的に継続できるという気持ちの方が強かったですね。メニュー開発は自分がこの8年間やり続けて今があります。今も会社と一緒に成長させてもらっています。仕事としてよりもブランドの成長を楽しんでいるそんな感じです。
今後は以前に出版したスープレシピの本の再販やスープスペシャリスト検定の実施や移動販売も考えているのでさらなる地域への貢献を図っていきたいです。
カルチャーイノベーションという理念
地域の食文化を良くしていきたい
その全てのツールがスープです