カタチになっていない物を掬いあげ、長野の食で未来をつくる

飲食業界は流行に左右されやすく、全国各地にあるこだわりある食の魅力が十分に伝えきれていないと感じています。私はその課題を解決し、新しい価値を生み出したいと考え、生まれ育った長野県の食文化を多くの人に届けることを目指しました。生産者のこだわりは、消費者と直接顔を合わせる機会が少なく、思いが伝わりにくいものです。そんな生産者に寄り添い、橋渡しをする存在が飲食店でした。だからこそ、生産者の想いと価値ある商品を飲食店に卸し、そこから消費者へ届けることで、関わるすべての人が幸せになれる関係をつくりたいと考え、起業を決意しました。「カタチになっていないものを掬いあげる」という想いを込め、日本発の長期熟成生ハムブランドを「掬月」と名付けました。情報があふれる時代だからこそ、本当に価値ある“食”をカタチにし、人々へ届けていきたいと思います。
幸せを生み出すための手段として選んだ起業

「30歳で起業する」と決めていました。多くの人は起業にハードルを感じるかもしれませんが、私にとって起業は目的ではなく、意思を実現するための手段でした。法人とは、志を持って成し遂げる存在です。関わる人々を幸せにしたいという覚悟を胸に、その想いを形にするために起業を選びました。就職や起業はゴールではなく、自分や周囲の人が幸せになるための手段です。人生を通して何を成し遂げたいのか、自分にとっての楽しさや幸せを追い求めることこそが、本当の目的だと思います。
ポジティブもネガティブも力に変える

私は、感謝の気持ちを持ち、面白いことに敏感でポジティブな人と一緒に働きたいと思っています。時代が逆境といわれる中でも、恐れずにまずはやってみようと行動する姿勢が大切です。何事も「面白い!」ととらえ、それを周囲に発信することで、自然と挑戦したい気持ちや冒険心が生まれます。とはいえ、ポジティブだけがすべてではありません。ネガティブな考えを持つことで、人の苦労や悩みに気づき、寄り添うことができます。「前向きに考えるのが苦手」と感じる人も、それを自分の個性として受け入れ、人生や組織の中で活かしてほしいと思います。大切なのは、自分らしさを認め、前を向く勇気を持つことです。
利他の心でつながる幸せの循環をつくる

私は働くうえで「関わる人をいかに幸せにできるか」を大切にしています。営利企業は売り上げを生み出す存在ですが、大切なのは目先の数字ではなく、その先にあるビジョン、つまり人の幸せです。そのためには、自分の心と体を他者に向け、利他のサイクルを生み出すことが重要だと考えます。自分中心の利己的な考えでは、他人と比べて苦しみやすく、続けることも難しくなります。一方で「誰かの幸せのために」と考えることで、人から感謝され、自分の心も満たされていきます。他者の幸せを願う行動が巡りめぐって、自分の幸せへとつながる。そんな利他の循環を広げていきたいと思います。
おいしさの背景にある価値を伝えるものづくり

私は事業を通して、多様なおいしさが認められる社会になってほしいと考えています。「おいしい」という感情は人それぞれで、インスタ映えするかわいさも、昔ながらの内装で食べるラーメンも、どちらもおいしさの形の一つです。その中でも私が伝えたいのは、食材や自然に込められた背景の価値や、おいしさの奥にある深い意味です。たくさん作って売れば利益は上がるかもしれませんが、それでは本当の価値は伝わりません。だからこそ、私たちは一つ一つの商品に時間と想いを込め、無駄のない丁寧な製造を心がけています。効率よりも誠実さを大切に、本当に「おいしい」と感じてもらえるものづくりを続けていきます。
若者へのメッセージ:実直に生き、好奇心を原動力に

私は「実直」という言葉を大切にしています。自分の心に素直であり、関わる人を幸せにしたいという想いに真っすぐ向き合うことを心掛けています。人や文化との出会いの中で、自分にない価値観に触れることで新たな発見が生まれ、好奇心が刺激されます。だからこそ、たくさんの「好き」を見つけて、それにどう関わるかを考え、積極的に挑戦してほしいと思います。自分の心に正直に、好奇心のままに動くことが、人生を豊かにしてくれると信じています。


食と人の想いをつなぎ、本当の価値を届ける挑戦
利他の心を軸に、新しい幸せの形を創り続ける