「トロッコ問題」を知っていますか?
マイケル・サンデルが提唱した「トロッコ問題」を知っていますか?「電車が暴走しています。このまま暴走すると、5人の人が100%死にます。あなたは、この電車のスイッチを切り替えることができます。しかし、切り替えるとその先にいる1人が死にます。あなたは切り替えますか?」という問題です。この質問をすると、大体の人は「切り替える」と答えると思います。
では、「この5人は知らない人で、この1人は知っている人だったら」どうなるでしょうか。そうしたら「切り替えない」という判断になる人もいるでしょう。この質問に正解はありません。ただ私は、どんな時も同じ判断を下した方が良いと思います。より大勢の人が幸せになる決断を下すというのが私の価値観です。
人を育ててこそ人生価値がある
「金を残して死ぬのは下だ。事業を残して死ぬのは中だ。人を残して死ぬのが上だ。」これは、後藤新平さんという方が残した言葉です。この言葉を聞いてどう思いますか?お金儲けは悪いことなんだ、と思う人もいるかもしれません。しかしこの言葉は、次のように続いていきます。「財を遺すは下 事業を遺すは中 人を遺すは上なり されど財無くんば事業保ち難く、事業無くんば人育ち難し」
お金を遺して死ぬのは下だけれども、まずは自分がお金を稼いで自立しなければなりません。そうしなければ事業を起こすことはできないからです。そして事業を作るためには人が必要であり、その集めた人を育ててこそあなたの人生は価値がある、という意味だと私は解釈します。
まず自分でお金を稼ぐことのありがたみを知るべきであり、非営利団体にいる人こそしっかりお金を稼いでみることが必要だと私は考えています。そこから事業が生まれ、そして人を育てることができます。
一国一城を築き気づいたこと
私は小布施町で農家の長男として生まれました。小学生の頃は、やんちゃで活発な性格でした。中学生になり漫画に出てくるようなクールなキャラに憧れて、クールなたたずまいをするようになりました。親からは30歳になったら農家を継ぐように言われていましたが、私にはやりたいことがありました。それが、26歳の時に始めた飲食店経営です。
小学生の頃に受けたメディアの影響で、自分の好きなお店を経営して自由に暮らしたいと考えていました。自分のお店を持ち「一国一城」がある人生が幸せな人生である、と思っていました。しかしある時「お金儲けが好きなんだね」とお客様に言われた言葉に違和感を感じました。自分はお金儲けではなく、人に感謝されることをしたい、と考えるようになり、まちづくりの道へと進みました。
人との出会いがもたらしたもの
まちづくり活動を通して、自分の利益ではなく人のために一生懸命活動する素敵な人々と出会いました。その人たちと行うまちづくり活動が楽しく、楽しいからさらに頑張ろうという気持ちになりました。こういった活動を行う中で、あるきっかけから小布施町議員にならないかと声をかけていただき、小布施町議員となりました。
そして次第に、小布施町に若い人が移り住むための事業を作りたいと考えるようになりました。周囲から、3歳未満の子どもを預けることができなくて地元の人が困っているというお話を聞き、まず地元の人たちの課題を解決しようと考え、3歳未満の子どもを預かる保育園事業を開始しました。
長野県の民間人で待機児童対策に最も貢献している
高田で当初認可外保育園を立ち上げた時、園児はほとんど集まりませんでした。やっている意味がはたしてあるのかと考えたこともありました。そんな中、保育事業を始めて一年半後に、「保育園落ちた日本死ね」というブログで日本中の待機児童問題が可視化されました。その問題を解消するために園を増やそうと考え、事業を拡大させていきました。
拡大させるにあたって、様々な苦労がありました。そんな時、私利私欲ではなくて、地域のために地域活動を行っていた姿を見てくれていた人たちが助けてくれました。いろいろな人に助けてもらって今があります。現在は、長野県の民間人で待機児童対策に最も貢献していると自負しています。
生まれてきた意味は、次世代を育てること
みらいく保育園で働いている保育士さんたちは、自分がやりたい保育ができていると感じている方が多いです。専門職の人がそのスキルを使ってやりたいことができる場を作り出しています。私が生まれてきた意味は、次世代の人たちを自分たちよりその環境に適した形で育てることだと思っています。それは、自分が幸せになるためでもお金を稼ぐためでもありません。子どもたちには、移り変わる社会に対応できる、柔軟で強い子たちに育ってほしいと願っています。
能力と意欲がある人に活躍してもらいたい
能力や仕事に対する意欲が高いのに活躍する場が与えられない人材に活躍してもらいたいと考えています。それに伴い、みらいく保育園では短時間正職員という仕組みを設けています。子育てをしているためフルタイムでは働くことができないが、能力は高く6時間の正職員の仕事があれば働きたいというような人材に、経理や事務などの中核的な仕事を任せています。
みらいく保育園では、「子育てを終え復帰したときに正職員として活躍したい人」「保育士の資格を持っていて、子どもを産んだタイミングで保育の仕事に就きたいと考えた人」「社会人になって保育士の資格を獲得した人」などが活躍しています。このように能力と意欲がある人達にどんどん活躍する場を提供していきたいと考えています。
働く上での軸「学び続ける、公正でいる」
団体のトップに立つ者として、「より多くの人が幸せになる選択をする」ことに重きを置いています。何事も、社会全体の幸せを考えて決断します。そういった点で、公正でいることが一つの軸です。また、トップとしてときには公正になるための厳しい判断を行わなければなりません。そうした際に、選択を間違えないように、歴史、心理学、様々な論文などで「学び続ける」姿勢を大切にしています。
児童発達分野への参入
最初は事業を拡大することに消極的だった職員が、「みらいく」の考えを広めたいと思ってくれるようになりました。今後は、「みらいく」という名前の園をさらに増やしていきたいです。そして、新たに障害児分野に進みたいと考えています。
現在、中野市に児童発達支援センターという障害児をお預かりするための施設を作ろうと計画しています。子どもの障害を心配する親御さんの相談にいち早く乗ることができる存在となりたい、子どもに適切なトレーニングを一日でも早く始めさせてあげたいという思いがあります。
人に感謝されることがしたい。まちづくりに貢献できる事業を立ち上げたい。そうして、今の子育て支援が始まりました。