51年の歴史が育んだ蕎麦造りの精神

当社は51年前、日本で初めて蕎麦粉と水だけで造る乾麺の十割そばを開発しました。それ以来、自然由来の材料を使った安全で美味しい蕎麦作りを目指し、社員と共に歩んできました。私は3代目の社長です。就任当初は「必ず前社長より良い結果を出してやる!」と自信に満ちていました。しかし、すぐにその自信が過信だったことを思い知らされます。最初の2〜3年は何をやっても空回りし、努力しても収益が伸びない苦しい日々が続きました。さらに、信頼していた社員が突然退職を申し出たことも大きな衝撃でした。「自分には魅力がなかったのか」「なぜ辞める理由さえ話してもらえなかったのか」と、悔しさや情けなさが募りました。
そんな中で痛感したのは、前社長の偉大さです。それまで私は「前社長を超えてやろう」と意気込んでいましたが、発想を転換し、先人の歩みを振り返りながら経営を見直すことにしました。この決断が転機となり、少しずつ会社の経営が好転。空回りしていた歯車がかみ合い始めたのを実感しました。
お客様の声が私たちの原動力

自社の商品を召し上がっていただいたお客様には、必ず「お味はいかがでしたか?」とお聞きするようにしています。私どもは店舗を構えているわけではないため、自分たちが「美味しい」と思って造った商品を、お客様がどう感じたのか直接知る機会が少ないのです。そのため、私はお客様に積極的に質問をしています。その際に「美味しかったよ」という言葉に加えて、「蕎麦の風味がしっかりしていて、蕎麦湯まで美味しく楽しめたよ」といった具体的な感想をいただけると、この仕事をやっていて本当によかったと感じます。そのような嬉しい言葉をいただくと、思わず感謝の気持ちを込めて、買っていただいた分以上にサンプルをお渡ししてしまうこともあります。
マニュアルに頼らない顧客満足への取り組み

当社では、「人がやらないことをする」「お客様が求めていることを突き詰める」「お客様に喜んでいただけることをする」という三つの目標を掲げています。社員には、この考えを常に念頭に置きながら仕事に取り組むよう話しています。さらに私は、仕事の中で「工夫すること」を非常に重視しています。社員には、自身が担当するお客様の立場になり、「どうすればお客様に喜んでいただけるのか」を自分で考え、行動できる人材になってほしいと願っています。
多くの企業では応対のマニュアルが用意されていると思いますが、当社ではあえてマニュアルを設けていません。それは、社員一人一人の個性があり、お客様ごとに求める対応や考え方が異なるためです。マニュアル通りの画一的な対応ではなく、社員それぞれが自分で考え、最善の対応を提供できるようにすることが、当社の人材育成の方針です。この方針を通じて、お客様に喜びを届けられる会社を目指しています。
「蕎麦パーク」構想:長野県の魅力を発信したい

私の現在の目標は、長野県に蕎麦の製造工場を併設した、食べ比べや手打ち体験、蕎麦の歴史を学べる複合型施設「蕎麦パーク」を建設することです。長野県は全国でも有数の蕎麦の名所ですが、その魅力を十分にアピールできていないと、以前から感じていました。そこで、長野県の蕎麦の魅力をより多くの人に知ってもらえる環境を作ることで、当社や県内の蕎麦産業だけでなく、長野県全体の活性化にも貢献したいと考えています。
全力で挑む姿勢が生む仕事と遊びの相乗効果

何事にも全力で取り組むことが私のモットーです。そのため、私は常に仕事も遊びも100%の力で取り組むことを心掛けています。一見、仕事と遊びは関係がないように思えるかもしれませんが、実際には遊びが仕事につながることが意外と多いのです。全力で取り組んできたことで、私は数多くの貴重な経験を得ることができました。その経験や学びは、今も私自身の力となり、日々の仕事に活かされています。
結果を追求する経営者の責任と覚悟

仕事には責任が伴います。私が大切にしている先代の言葉に、こうあります。「仕事でお金をもらうということは、その仕事のプロであるということだ。プロは結果を残して当然で、結果を残せない人は多くを語る立場にない。」この言葉を胸に刻み、私はこれまで結果を残すことを追求してきました。社長には社員やその家族の生活を守る責任があります。だからこそ、「社長が結果を出せないということは許されない」と自分を鼓舞しながら経営に向き合ってきました。私は決算書を「社長の通知表」だと考えています。そのため、毎年、来年度の決算目標を立て、社員と共に達成に向けて取り組んでいます。
若者へのメッセージ:挑戦を恐れず結果と向き合え

近年、結果に真正面から向き合える若者が年々減ってきているように感じます。しかし、挑戦した結果、思うような成果を出せなかったとしても、決して下を向く必要はありません。大切なのは、「なぜ結果を出せなかったのか」を分析し、「次こそは結果を残してやるぞ」と前を向いて新たな挑戦をすることです。結果から逃げずに向き合い続けることで、やがて成功を掴み、その経験が大きな自信につながります。だからこそ、挑戦を恐れず、さまざまな世界に飛び込んでほしいと思います。自分自身にリミッターをかけるのはもったいない。皆さんの可能性は無限大なのですから。
長野県の蕎麦文化の魅力を世界に発信したい
社員それぞれが自分で考え対応することで、お客様に喜びを届けられる会社へ