「夷険一節」と「正射必中」
私には大切にしている言葉が二つあります。一つ目は「夷険一節(いけんいっせつ)」という言葉です。これは、自分が置かれた状況が順境であれ逆境であれ、一喜一憂せずに、現在の環境を素直に受け入れ、態度や姿勢を一貫させることを意味しています。多くの経営者もこの考え方を持っているため、私もこの言葉を心に留めています。
二つ目の言葉は「正射必中(せいしゃひっちゅう)」です。これは、正しい射法を用いれば矢は必ず的に命中するという、弓道の理念や心構えを示しています。高校時代、私は弓道部に所属していました。弓道には「射法八節(しゃほうはっせつ)」と呼ばれる、矢を射る際の八つの基本動作があります。これらの動作を正しく行えば、矢は必ず的に当たります。
経営においても、正しい方法で行えば最終的には成功すると私は考えています。ただし、売上を追求するあまり不正行為に走る経営は、正しい経営とは言えません。「正射必中」は弓道だけでなく、経営においても重要な教訓です。これらの二つの言葉は、経営に深く関わっており、私が経営を行う上で常に念頭に置いているものです。
弓道で学んだこと
中学と高校の時期、私は運動や勉強が特に得意ではありませんでした。自分の自信を築ける何かを見つけたいと考えていたとき、弓道部の先輩から「弓道は運動神経がなくても活躍できる」と聞きました。それをきっかけに、もしかすると私も弓道で活躍し、自信を得られるのではないかと考え、入部を決意しました。弓道は私の周囲では馴染みが薄く、ほとんどの仲間が未経験者でしたので、私たちはスタートラインが同じでした。
部活動に入ってからは、一生懸命に努力し、団体戦や個人戦で良い成績を収めることができました。この成功は私の自信に大きくつながりました。弓道で学んだ心構えや礼儀、考え方などは、今の私の経営スタイルにも大きく影響しており、弓道部に入ったことは本当に良かったと心から思っています。
経営の魅力
私が現在の会社に入社する前、経営コンサルティングの仕事をしていました。大学を卒業した後、専攻した分野に関連する職種への就職も一つの選択肢でした。しかし、就職活動を進める中で、私は自分が本当にやりたいことを深く考えるようになりました。
私の父は会社を経営しており、その影響で経営に対する考え方や、仕事に対する思いについてよく考える機会がありました。経営は大きな影響力を持ち、自分の志を実現できる魅力的な仕事だと感じました。ただ、直接経営者になることはできないため、経営に近い職種で経験を積みたいと考えました。候補として銀行、広告代理店、経営コンサルティングなどがありましたが、その中でも最も経営に密接だと感じた経営コンサルティングを選択しました。
取り組みたいことのリスト化
私は会社に入社して以来、いつか社長になった際に取り組みたいと考えていることをリストに書き留め続けています。現在もこのリストは進行形で、新たなアイデアが浮かんだらすぐにメモしています。例えば、工場のレイアウト変更、トイレのリニューアル、福利厚生や働き方の改善など、細かなものを含めると約200項目にも及びます。既に取り組んだこととこれから取り組むことを色分けして記録し、一目で状況が把握できるようにしています。
これにより、自分が取り組んだ内容を可視化し、その効果を振り返り、次のステップにつなげることができます。また、職場の小さな改善が社員の働く環境を良くし、モチベーションの向上につながります。このリストは今後も更新し続け、社員全員が働きやすい環境を目指していくつもりです。
周りと協力して取り組むモノづくり
高度化する電子機器や通信機器に使用される電子材料や半導体材料の需要は年々高まっており、私たちの会社に求められる役割や期待も高まっています。しかし、台湾、ドイツ、中国、アメリカなどが競争相手となっているため、私たちの価格、技術、品質はグローバルな基準で比較されています。業界では、他社に買収されたり、廃業に追い込まれたりした会社も多く見てきました。私たちの会社では、設備投資を行い国際的な競争力を高めることはもちろん、社会への貢献も重要と考えています。
また、他社との協力にも積極的であり、共に強い力を築きたいと思っています。特に、地域内で後継者不足や経営困難に直面している企業があれば、業界が異なっても共通点を見出し、支え合いたいと考えています。このような連携を通じて、産業の空洞化を防ぎ、共に成長する道を模索しています。
目指すは革新と共生。会社を次のレベルへと押し上げ、周囲の企業との協力を通じて、持続的な成長を追求していく