べにまるくん誕生秘話
信越報知は長野県松本市に本社があります。消防設備や防犯設備などの弱電機器を扱う会社です。私は2代目社長として、消火器などの消防設備の点検実施率を向上させたいと考えています。消防設備点検は年2回行うよう消防法で定められていますが、普段は使用しない設備の点検にコストをかけたがらない事業者が多いです。
万一の際に大切な命や財産を守るためには、日頃からの備えが必要です。確実に点検を実施するような「備えあれば憂いなし」の意識を地域で形成するために、信越報知という会社があると考えます。
2021年に創立50周年を迎えたのをきっかけに、アーティスト・カミジョウミカさんにマスコットキャラクターをデザインしてもらいました。消防設備点検の普及にも活用したいと考え、消防と聞いてイメージが湧きやすい消火器のキャラクターです。地域の小中学生から名称を公募した結果、名前は「べにまるくん」に決まりました。カミジョウミカさんから、自分のキャラクターが着ぐるみになるのが夢だと聞いたこともあり、着ぐるみにもしています。保育園に消火器訓練のボランティアに行く際は、べにまるくんも一緒に行き訓練に参加してきました。子どもたちに大人気です。
消火器は危ないから触らない?
子どもの頃、大人から「消火器は危ないから触るな」と言われた人が多いと思います。私は保育園に「子どもたちにぜひ消火器の使い方を教えさせてほしい」とお願いしてきました。火災が起きた際、自分の命を守るために、子どもたちも使い方を知る必要があると思うのです。べにまるくんや社員と保育園のボランティアに行って、火の消し方を伝えると、幼い子でも正しく使うことができます。
子どもたちへの発信を大切にするのは、防災意識を世代を超えて繋いでいきたいという思いがあるからです。子どもに防災の大切さを伝えるグッズは現状あまりありません。そのため、地域の高校生と一緒に、べにまるくんが登場する絵本を作り、子どもたちに届ける企画を進めています。子どもに防災の大切さを伝える取り組みが、ひとつの地域貢献になれば嬉しいです。
社員のやりたいことを実現できる会社に
私は休みの日も社員と行動することが多いです。先日は社員5人とアーティストのライブに行きました。聴いていたら社員も私もファンになったアーティストがおり、先日行ったのはその解散ライブでした。およそ30人いる社員を一人間として尊重して、対等にコミュニケーションを取ろうとする姿勢は自分に合っていると感じます。
社長に就任する以前から会社の方向性を考えて、「社員のやりたいことを形にする」会社になるよう取り組んできました。社員が自らのやりたいことや意見を言える雰囲気をつくるため、私は会社の二つの点を変えました。
一つ目は幹事制度です。毎年3人ほどの社員が幹事となり、やりたいことの企画を立てて実施します。共助の意識を学べるドミノ、避難所運営ゲーム、フットサル大会などが社内企画で実施されました。一見仕事に関係がないことでも、自分で考えて企画を立てることは、会社の団結力向上や、顧客へのよりよい提案に繋がっています。初めは反対意見が多くても、丁寧に意義を説明し、企画を練り、最終的に皆必死になって楽しむ姿を見ることで、企画した社員は挑戦したからこその達成感を味わうこともできます。私も監修する中で、社員の考えや1人では思いつかないアイデアに触れることができ、楽しさを感じています。
二つ目は社員総会です。各部署が総会に向け考えた方針を意識し続けられるように、頻度を増やしました。社員は自分たちで考える経験を積むことで、資料作成の効率が上がり、必要な技術取得のための研修会に出たいといった提案も積極的にするようになりました。導入当初は今までのやり方を変更することに批判も多かったのですが、継続することで支持してくれる人が増えたように思います。
他にもオフィスの棚や区分けを撤去し、部署を超えて話しやすいようにしています。デジタル化への対応やフレックスタイム制導入、男性育休制度の整備など、社員がやりたいことを当たり前にできるようにする環境を整えました。
仲間を大事に「挑戦・行動・興味」
人間関係を大切にすることは、父から常々教えられてきました。仲間を尊重しつつ、挑戦し行動することが私は好きです。20代から30代前半には松本の夏祭り「松本ぼんぼん」で友人と連を作り出場していました。祭りなどの集まりを積極的に企画する中で知り合った友達が、今では互いに依頼を請け負う仕事仲間になることがあります。
信越報知の社員にも、「挑戦・行動・興味」を意識することを伝え続けています。興味をもって挑戦することは忘れずにいてほしいと思います。社会人だけでなく大学生にとっても、仲間と何かに挑戦してみることは、とてもよい経験になります。結果的に企画に必要な人数が集まらなかったり、うまくいかなかったりしたとしても、一度実行してみることで、想像ではなく結果に基づいた前向きな話ができます。想像で話をするより、実践して学ぶほうが自らの成長に繋がります。
高校生と防災を発信していく
今力をいれているのが、高校生とタッグを組んだ防災情報の発信です。高校生は住む地域に土地勘があるからこそ、改めて災害時の対応を家族と話し合うことが少ないです。自治体の避難訓練に参加する機会もあまりありません。だからこそ自ら防災に関する企画を実施する中で、命を守る知識をつけてもらいたいと考えました。具体的には、高校生のための防災キャンプを予定していて、一緒に準備を進めています。高校生による、若者に向けたSNSの配信も始めました。身の周りで見つけた危険や、キャンプを通じて考えたことを発信してもらいたいです。5年に1度の消防設備展示会「東京国際消防防災展」が今年の6月に行われた際には、近隣自治体の防災係に加えて高校生も招待して、消防展を訪問してもらいました。
想像力を持ち続け、新たな可能性に挑戦する
小学生の頃には、先代である父が仕事で忙しくしているところを見ていました。具体的に何をしているのかは分かりませんでしたが、兄弟の中でもイベント好きな自分が会社を継ぐ意識は、なんとなくあったかもしれません。高校生の時はサービス業に携わりたいと考えており、信越報知に入社してからもイベント業に興味がありました。会社を継ぐことになって、実際に社長になってからも、地域や顧客、社員など様々なところに働きかけ、発信する人間でいたいという気持ちは変わりません。父から受け継いだ消防設備を管理する業務は今後も欠かせないものであり、私にとって取り組むのが当たり前のことです。高校生との連携や保育園へのボランティアに取り組む中で、これからの事業展開の方向性を探っていきたいです。消防設備、防犯設備、セキュリティ設備の施工・保守をひとつのサービスにまとめて企業に提供することを考えていますし、べにまるくんも県内外に広めていきたいですね。一番は、消防設備点検の実施率向上に繋げていきたいです。これからも想像力を持ち続け、地域の「備えあれば憂いなし」を形成する信越報知の役割を果たしていきます。
自分で命を守れるように
保育園や高校生を巻き込みながら若い世代の防災意識を高めていく
想像力を持って、新たな事業に挑戦する