北原 修

株式会社 成進社印刷
北原 修
OSAMUKITAHARA

自分たちの原点は「情報伝達産業」である。「感動提供型の発信力」を養い、お客様に寄り添いながら新たな価値を創り出す社長。
掲載日2025.2.21

成進社印刷 北原修社長「お客様に寄り添いながら、その価値をさらにその先へ発信する」【松本市】

自分たちの原点は「情報伝達産業」である。「感動提供型の発信力」を養い、お客様に寄り添いながら新たな価値を創り出す成進社印刷の北原修社長に、入社のきっかけや、仕事の領域が広がっていったきっかけなどについてお話を伺ってきました。

インタビュアー
楠田 陽子

松本から広がる挑戦と可能性
「感動提供型の発信力」を養い、お客様に寄り添いながら新たな価値を創り出す

目次

人生観が変わった選択

私は松本市出身で、中学・高校と地元の学校に通っていました。その当時は医師を目指していたのですが、それは叶わず、早稲田大学教育学部数学科へ進学することにしました。高校時代からお付き合いしていた方も、同じ東京の大学に進学しました。父からは信州大学への進学を勧められていましたが、地元の狭い範囲で人生を決めることにどうしても我慢ができませんでした。そのため、東京へ進む道を選ぶことにしたのです。学生時代も、東京で就職した後も、現在のような仕事に就くことは全く想像していませんでした。

経営コンサルから故郷松本へ

大学卒業後、私は大手の経営コンサルティング会社に就職しました。この会社を選んだ背景には、かつての夢であった「医者になりたい」という思いが関係しています。人の病気を診る医者ではありませんが、経営コンサルタントは様々な会社の「お医者さん」のようなイメージがありました。また、就職活動中に友人から「口達者な自分にはこの仕事が向いている」と助言されたことも大きな影響を与えました。経営コンサルティング会社での仕事は、現在なら許容範囲を超えるほどの忙しさでしたが、私の人生にとって間違いなく大きな転機でした。日々熱心に働く中で築いた人間関係は今でも続いており、学ぶことも多く、得るものも非常に多い日々でした。当時の私は、将来も東京でこのように働き続けたいと考えていました。

しかし、東京で働き始めて数年が経った頃、松本にいる実母が癌にかかり、余命宣告を受けました。母の看病をするため、高校時代からお付き合いをしていた彼女と松本へ戻る決断をしました。その後結婚をしたのですが、母の看病で精一杯で、どんな職に就きたいかを考える余裕もありませんでした。そんな中、妻の実家である成進社印刷から「ここで働いてみないか」と声をかけていただき、入社することになりました。入社のきっかけは、まさに自然ななりゆきでした。

街づくりと仲間づくりの9年間

成進社印刷に入社してから社長になるまでの間、私は松本青年会議所で9年間、まちづくりに熱心に取り組んでいました。仕事が終われば青年会議所の会議や会食に参加し、翌朝はまた仕事へ行くという生活を続けておりました。子育てや家のことは妻まかせで、妻にはよく怒られましたね。しかし、それほどまでに街を彩る活動に夢中だったのです。

私が中心となって企画した青年会議所のイベントのひとつに「フードクリエーターコンテスト」があります。この企画では、地元の食材を使ったレシピを考案し、パワーポイントを用いて発表してもらうというものでした。条件は、地域の食材を使うことと、身体に良い料理を作ること、そして、発表の時には、なぜそれが身体に良いのかを説明することです。このイベントには大学生や高校生を含む多くの方々に参加していただき、地元の魅力を再発見する場となりました。こうした企画を通して仲間ができ、関係が深まっていきました。私が青年会議所に入った理由のひとつは、十数年松本を離れていたため、地元で新しい友人や仲間が欲しかったからです。こういった活発的な活動の中でたくさんの友人ができ、おかげさまで、青年会議所を40歳で卒業した今でも当時の仲間たちとは親しい関係が続いています。

経営理念を見直し、リーマンショックを乗り越える

私が成進社印刷の社長に就任したとき、世の中はちょうど、リーマンショックの時期でした。その影響で当時売り上げは4割も減少し、そんな中で会社を引き継ぐプレッシャーは言葉で言い表せないほど大きなものでした。それでも、この危機を乗り越えるために、私たちは「自分たちの本業は何か」という原点を見つめ直しました。その時に再認識した私たちの本業は「情報伝達業」です。ただの印刷業ではなく、情報を他者に伝える仕事。その手段として印刷やチラシ、さらにはホームページなどがあるのです。その考えを基に、「私たちはお客様のその先に、お客様の存在価値を提案する」という “Create Better Works  for Customers of Our Client” という経営理念を掲げました。

本業を明確にすることで、どのような仕事に取り組むべきかが明確になり、私たちの基準が定まりました。「情報を伝達すること」に集中する一方、それ以外の業務は私たちの領域外とし、質の高い情報伝達を追求することこそは、誰にも負けないようにと力を注いでいます。こうして、私たち自身の仕事の足元を盤石にすることが、本業を見つめ直し経営理念を定めた理由でした。この考え方は、仕事の面白さにもつながっていきました。数字ばかり追いかける働き方ではなく、お客様と共に悩み、創り上げる過程を楽しむ。このような仕事の仕方が私たちの企業文化となっています。

また、こうした取り組みの中で、業務の種類が増え、徐々に会社の規模も拡大してきました。私はスタッフに対して「感動提供型の発信力」を養い、それを実行に移すことを大切にしてほしいと考えています。お客様に寄り添いながら、新たな価値を創り出し続けることが、私たちの会社の成長を支えているのです。

共につくる楽しさと価値を届ける仕事

お客様と話し合いながらものを作ることは、もちろん、大変なこともあります。しかし、それ以上に楽しいことの方が多いです。今は仕事が楽しく、スピードも効率もよく、クオリティも高い仕事ができていると感じています。このような環境を作り上げられているのは、私の会社で働いてくれている素晴らしいスタッフの皆さんのおかげです。私たちのスタッフは、大手企業と比較しても劣らない優秀なメンバーだと自負しています。仕事に対して意欲的で、魅力的な人ばかりです。

お客様のために、さらにその先のお客様の消費者に価値を提案するためには、まず私たち自身がその商品の消費者となり、魅力を体験することが重要です。そのために、まずお客様の商品を購入し、商品の魅力を深く理解した上で提案を行っています。私たちを通じて、お客様の利益の手助けができることを心から光栄に思います。

松本から世界へ 学会運営で広がる挑戦

現在は、長野県の医学会の学術集会のお仕事にも多く携わるようになりました。コロナショックが起きたのは、そのような中です。学術集会は大きな大会で、たくさんの方が長野県に来ます。しかし、コロナ禍の世の中では参集が叶わなくなりました。そうした状況の下で私たちはオンライン学会(Zoomを使った学会)運営の相談を受けました。オンライン学会のサービスを提供する会社は首都圏を中心に存在しますが、当時地方都市にはありません。その時に、大会長の先生方からチャンスだから「やってみないか?」と声をかけていただいたのです。社員と心を合わせ「それならやってみよう」と思い立ちました。私たち印刷会社ではそのようなことの実績はありませんでしたが、コロナ禍で時間がある程度確保できたこともあり、仕事の合間にスタッフと一緒にZoomを使った運営方法を試行錯誤しました。100万円以上の設備投資をして本格的な学会運営を行い、無事学会を成功にまで導くことができました。

また、全国規模の医学会の学会の事務局も複数担当しています。そうした中、理事長の先生方から「全世界に向けた医学英文論集を作りたい」というご相談を受けました。和文の論文は多数実績がありましたが、英文論文は初めてです。国内からの投稿だけでなく、海外の研究者からの投稿もあります。自分たちが「世界を変えよう!」 そのような心意気から、全世界の研究者に向けた論文投稿の方法や、冊子をどうすれば読みやすく、見やすいものになるのかを考え、こちらも何度も試行錯誤を重ねました。今では、長野県の地方都市がヘッドクオーターとなって世界に繋がるような気持ちになり、とても楽しいです。

お客様の期待が形に進化していく仕事の広がり

10年ほど前にセイシン・ウェブというホームページ制作会社を設立しました。実は、当社で制作した印刷物をホームページにしてもらえないかという依頼がスタートです。知識も技術も無いところからのスタートでした。最初からこうした形態を目指して計画的に広げたわけではなく、お客様の期待やニーズに応える中で自然と業務の幅が広がったのだと今は思っています。もちろん、新しいことを取り入れるには多くの勉強が必要です。それでも、当社には意欲があり好奇心旺盛なスタッフが多く、そうした挑戦を前向きに楽しんでくれるメンバーに恵まれています。はじめの頃はうまくいかないことも多かったデザインの仕事も、今ではクオリティが格段に向上し、私自身も驚くほどの成果を出してくれています。お客様の期待に応えながら、進化していく仕事の広がりを実感できる環境を大切にし、これからも挑戦を続けていきたいと思っています。

集客から収益まで支えるイベントサポートの取り組み

イベントの広告や集客、さらに収益化に至るまで、こうしたことへ課題を抱える方々の手助けをしたいと考えています。私たち自身がイベントの中身を作ることはできませんが、印刷物の制作とホームページの制作の両方を駆使し、私たちの強みを生かして、集客から収益までをサポートすることが出来ています。たとえば、事前予約を導入すれば、イベントに何人来場するのかを事前に把握でき、それだけで運営がスムーズになります。また、参加者からのオンライン集金システムを導入することで、ご集金という面倒な作業も、私たちが肩代わりすることができます。これにより、イベント主催者はイベントの中身に専念できるようになって、より良いイベントの実施にもつながるでしょう。実際に、学会ではこうした活動が成功を収めてきました。だからこそ、今後は他の企業や団体にもこの取り組みを広げ、多くのイベント主催者の方々をサポートしていきたいと考えています。

「人生意気に感ず」

亡くなってしまった友人が言っていた言葉を、ふと思い出すことがあります。「人生意気に感ず」。その友人とは学生時代に出会い、一緒に馬鹿なことをしたり、酒を飲んだり、「将来の日本はこうなるべきだ!」なんて語り合ったりしました。そんな時間が、今でも私にとってとても大切な思い出です。仕事でも、教授の先生方やお世話になっている方々に「お願い!」と言われると、不思議とその言葉に意気を感じてやる気が湧いてきます。そんな自分の性格も、この友人との思い出や「人生意気に感ず」という言葉に支えられているように感じます。だからこそ、今の私の座右の銘はこの言葉そのものです。

若者へ 自らの可能性を信じて

自分の能力に、自分で蓋をしないでほしいと思っています。これは私の子どもたちにも常に伝えていることです。この考えは若い頃だけでなく、人生を通して変わりません。「自分にはできない」と勝手に決めつけるのではなく、可能性を信じて挑戦してほしいのです。もちろん、最終的に自分が落ち着く場所はあるでしょう。それでも、本当に「できない」ことなんてないと信じています。自らの可能性を抑えつけるのではなく、一歩踏み出し挑戦し続けることで、新たな自分や目標に出会えるのではないでしょうか。

北原 修
北原 修
OSAMUKITAHARA
1968年長野県松本市生まれ。早稲田大学教育学部卒業。株式会社日本LCA入社。1997年株式会社成進社印刷入社。2008年、代表取締役社長に就任。
株式会社 成進社印刷

住所:〒390-0221

   長野県松本市深志2-8-13

TEL:0263-32-2301

FAX:0263-36-4691

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本記事のインタビュアー

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