内藤 学

内藤ロジテック 株式会社
内藤 学
MANABUNAITO

物流現場において現場を根底から支えられる存在でありたい。若者の教育にも力を入れ、新しいことへ挑戦し続ける社長。
掲載日2025.8.4

内藤ロジテック 内藤学社長「物流人材サービスで人の役に立ちたい」【松本市】

物流現場において現場を根底から支えられる存在でありたい。若者の教育にも力を入れ、新しいことへ挑戦し続ける内藤ロジテックの内藤学社長に、学生時代力を入れた野球の話や、若者への思いなどのお話を伺ってきました。

インタビュアー
楠田 陽子

「誰かの役に立ちたい」という思いが原点にある
人を大切にして物流現場を支えたい

目次

高校野球での挫折と決意

私は学生時代、野球に青春のすべてを捧げました。小学生の頃から野球を続けてきた私は、高校でも本気でやりたいと、松本市にある野球の名門校に行くことに決めました。そこは全国から実力者が集まる、まさに「エースで4番の集まり」と言われるような場所。強い代になるほど、レギュラーとそうでない選手との差がはっきりと表れる厳しい環境でした。私も「その高校に入るならレギュラーを目指せ」と言われて入学しましたが、現実はそう甘くありません。先輩たちはもちろん、同期にも驚くほどうまい選手が多く、レギュラーに入るのは相当難しい状況だったのです。私は心の弱さから、そのうち練習から逃げるようになってしまいました。高校野球の期間は2年半。やっている間はとても長く感じましたが、客観的に見れば短い時間です。そのわずかな期間に一度でも逃げてしまえば、もう他の選手に追いつくことは至難の業です。自分のふがいなさに打ちのめされ、何度もやめようと思いました。そんなある日、私が辞めようとしているという話を聞きつけた卒業した先輩が、練習終わりにご飯に誘ってくれました。そして先輩は「とりあえず続けろ。続けていれば、必ず良いことがあるから」と声をかけてくれたのです。今振り返れば、本当にシンプルな言葉です。でもその一言が、不思議と心に響きました。私は「もう少しだけやってみよう」と思い直しました。逃げた経験も含めて、あの高校野球の日々が、今の自分をつくってくれたと感じています。

挫折を経て得た誇りと、人の役に立つ喜び

一度逃げた私が、再び努力してレギュラーやベンチ入りを目指すのは、正直とても難しいことでした。自分が立ち止まっている間にどんどん上手くなっていく同期の姿に、勝手に傷ついては落ち込む日々もありましたね。それでも「このまま終わりたくない」と思い、私は監督に思いを伝えました。選手としてはもう諦めたけれど、何かチームの役に立ちたい。だから、ノックを受ける側ではなく、裏方としてノックを打つ側をやらせてほしいとお願いしたのです。もちろん、心の中はすっきりしないままでしたが、自分なりに折り合いをつけて野球部に残る決意をしました。

私たちの代は、春の選抜で準優勝した世代でした。そしてその世代の最後の公式戦、国体の決勝戦を迎えたとき、普段はコーチが担当する試合前の外野ノックで、コーチが私に「学、今日はお前が打て」と声をかけてくれたのです。コーチ章をつけて、試合前の外野ノックを任されたあの瞬間は、私の人生の中でも強烈に記憶に残る出来事になりました。ずっと割り切れない気持ちで続けてきた役目でしたが、そのとき初めて「やっていてよかった」「人の役に立てた」と心から感じることができました。その経験が、今の私の仕事にもつながっています。誰かの役に立ちたい、自ら進んで人のために動きたい——そんな思いの原点は、あの日のノックにあります。ちなみに、国体の決勝で私たちは優勝を果たしました。同期の仲間たちがメダルを大切にしているように、私はあのときのコーチ章を今でも大切にしまっています。

野球を通じて若者と出会い、中小企業の魅力を伝える

内藤ロジテックには、今年で創立3年目となる野球チームがあります。私自身、学生時代はずっと野球漬けの日々を送ってきたこともあり、若い人と出会う方法を考えたときに、真っ先に浮かんだのが野球でした。中小企業が大手企業と比べて採用で不利になりがちな中で、野球という軸を持つことが、若者との新たな接点になると考えたのです。特に県外に出た若者が地元に戻る際、仕事と野球を両立できる環境を求めていることも多く、そんなときに私たちのチームがあれば受け皿になれるのではと思いました。野球チームを通して企業に興味を持ち、入社してくれる若者と出会えたら嬉しい。そんな思いでチームを立ち上げた結果、すでに4人の若者が入社してくれています。

もともとは採用を意識して始めた野球チームでしたが、やがて「大人になっても本気で野球を続けたい」と願う人たちが自然と集まり始め、活動の幅を広げていくべきだと強く感じるようになりました。その一方で、勝ち負けにこだわるだけでなく、選手には家族や仕事を大切にすることも常に伝えています。また、スポーツを真剣に取り組んできた人材を、私たちのような中小企業がどう活かしていくかというテーマも、チームの活動における重要な目的の一つです。

若者の未来を支えるという責任

野球チームを立ち上げたことで、私たちの会社にも若い世代の社員が入社してくれるようになりました。彼らはちょうど私の子どもと同じくらいの年齢で、そんな若者たちを迎え入れたことで、私たちには「育てる責任」があると強く感じるようになりました。採用するだけでは不十分で、入ってくれたからには一人ひとりの将来をしっかり支えてあげたいと思っています。私は、社員たちに「これから自分がどうありたいか」「どう人生を楽しんでいくか」を考えられるようになってほしいと願っています。先日もその一環として、社員一人ひとりにキャリアコンサルタントを実施しました。たとえ彼らが自分のやりたいことを見つけて会社を離れる日が来たとしても、そのときに他の企業の方が「この人をぜひ採用したい」と思えるような人材に育っていてほしい。そのための教育の基盤を、会社として整えていくことが今の私の大きな目標です。最終的には「内藤さんで働いている人や、内藤さんで働いていた人は、みんな良い人で幸せそうだね」と言われるような会社になりたい。そう思いながら、若い人たちと向き合っています。

リーマンショックを経て学んだ、経営の現実

ここまでお話ししたような取り組みは、決して最初からできていたわけではありません。私が会社を継いだ翌年にリーマンショックが起こり、当時は目の前のことで精一杯でした。会社をどうにかして継続させなければという思いで、がむしゃらに走り続けていた時期が長く続いていたのです。助成金に頼りながらなんとか維持はしていたものの、実際に仕事ができない日も多く、精神的にも厳しい状況でした。特に印象に残っているのは、リーマンショック当時、平日に市内の工業団地を回っても多くの企業が休業のため、工業団地が静まり返っていたことです。さらには、海外の出来事がテレビの中の話ではなく、現実として私たちの生活や経営に猛烈なスピードで影響を及ぼしてきたことも、強い恐怖として心に残りました。この経験を通じて、会社を経営する上で「絶対に大丈夫」は存在しないのだという現実を、身をもって知ることになったのです。

物流と人を繋ぐ、新たな挑戦

私たちの仕事は、主に大型機械や工業製品などを輸出する製造会社に対して、製品が錆や衝撃などの内外的要因に耐えられるように梱包する業務です。製品を預かり、輸出までを請け負う、いわば物流現場のアウトソーシングを担っています。こうした日々の業務を行う中で、会社の将来を考えたとき、地域の中でもっと役に立つことを増やしていきたいという思いが常にありました。しかし一方で、まったく畑違いの分野にはすぐに踏み出せない現実もあります。そのひとつとして、地域の労働力不足に貢献するため、今年1月に人材派遣の許可を取得しました。私たちの仕事は、もともと物流現場の人材サービスに近いものでした。これまでは請け負いを中心にしていましたが、これからは物流現場で人手が不足している現場へ、人材を派遣することができるようになります。そして同時に、その派遣社員が現場で力を発揮し、正社員としての採用を希望された場合にも対応できるよう、同じ1月に職業紹介の許可も取得しました。やはり私は、現場で最も大切なのは「人」だと考えています。だからこそ、今後は人を中心とした物流人材サービスをより一層強化し、現場を根底から支えられる存在でありたいと思っています。

若者へのメッセージ:目の前のことに一生懸命になること

若いうちにこれをした方がいい、あれをした方がいい、資格を取った方がいいなど、考えることは本当にたくさんあると思います。けれど私は、それよりも「目の前のことに必死になれるかどうか」が何よりも大切だと思っています。世の中には「やった方がよさそうなこと」が無数にありますが、それと同じように、目の前には日々やるべきことが次々と降ってくるものです。そのひとつひとつに対して真剣に、一生懸命になれるかどうかが、結局のところ一番重要なのではないでしょうか。もちろん、誰にでも苦手なことはありますし、すべてを重く捉えすぎても息苦しくなってしまいます。でも、だからこそ、自分にできる範囲の中で目の前のことにきちんと向き合い、軽視せずに取り組める人になってほしいと思うのです。将来のことを考えることも大切ですが、まずは今、目の前にあることにどれだけ全力を尽くせるか。それが次のチャンスや未来につながっていくのだと、私は信じています。

内藤 学
内藤 学
MANABUNAITO
1973年長野県安曇野市生まれ。松商学園高校卒業。トヨタフォークリフト株式会社勤務。1998年、内藤ロジテック株式会社入社。2006年、代表取締役社長に就任。
内藤ロジテック 株式会社

住所:本社・松本工場
   〒399-0033
   長野県松本市笹賀6140-1
   上田工場
   〒386-0407
   長野県上田市長瀬1603-1

TEL:本社・松本工場 0263-26-8284
   上田工場 0268-75-2330

FAX:本社・松本工場 0263-28-8239
   上田工場 0268-75-2331

2代目 ワークライフバランス重視 中信 創業50年以上 地域密着型 売上1億円以上 女性が活躍 社員数30人以上 運輸 50代社長

本記事のインタビュアー

GUGENではインタビュアーとして活動していただける学生を募集しています。
長期インターン募集中! GUGEN - 信州CEOインタビューメディア 長期インターン募集中! GUGEN - 信州CEOインタビューメディア