滝澤 顕

株式会社 滝澤工務店
滝澤 顕
AKIRATAKIZAWA

好き嫌いではない。人の役に立つことを一番の原動力に、速く上手い建築を目指し挑戦しつづける組織づくりに取り組む社長。
掲載日2023.6.21

滝澤工務店 滝澤顕社長「よりよいものづくりに社員と共に挑戦する」【松本市】

好き嫌いではない。人の役に立つことを一番の原動力に、速く上手い建築を目指し挑戦しつづける組織づくりに取り組む滝澤工務店の滝澤顕社長に、社長を継ぐプレッシャーに向き合った話や、3代目として挑戦したい組織づくりに関するお話を伺ってきました。

インタビュアー
小古井 遥香

人のために尽くす
依頼を断らずやってみる会社のアイデンティティを引き継ぎながら、会社をよりよい組織にする挑戦に向き合い続ける

目次

要求に応えるだけで仕事になるわけではない

「滝澤工務店」は、松本市内から県外まで幅広く建築を手掛ける工務店です。私は2019年から3代目の社長を務めていますが、受け継がれてきた地域からの信頼を受け継ぐには、単なる利益追及ではなく、より説得力のある提案ができる組織づくりが必要だと考えました。社員には「お客様の口にした欲求を満たすだけで仕事になるわけではない」ということを伝え、実際にお客様の想定を超えるために、社員の技術力を向上させやすい環境を作りました。また、よりよい成果の上げ方を一方的に伝えるのではなく、一緒に考える意識を持って接するようにしています。社員は皆、私が成長に一番大切だと思う「やる気」と「嘘をつかない性格」を持っており、人間性が魅力です。私は3代目社長として、社員が人間性を生かし主体性を発揮できるような組織作りに挑戦しています。

会社を継ぐ迷いが覚悟に変わるまで

幼稚園の時には、タクシーの運転手になりたいと作文に書いていました。父が帰宅時に利用するタクシーを運転したかったのです。先代である父の影響は幼少期から大きいものでした。未来のことを少しずつ考えるようになった中学生の時には、会社を継ぐ意識がありました。誰かに言われたわけでもなかったのですが、「自分が継がなければいけない」という義務感がありました。高校3年次、将来へのレールが敷かれていると感じ、自分の選択肢が狭まっていると考えてしまった時は苦しかったです。大学では同じく会社の跡継ぎである友達に恵まれました。皆会社を継ぐ意識はなんとなくある一方、将来を考える中で迷いは生じるものです。同じ境遇の仲間に出会えたことは、覚悟を決めるうえで助けになりました。社会人になった後、青年会議所で様々な経営者に出会い、社長としてのリーダーシップを学んだ経験も役に立ちました。

学び続けプレッシャーを克服

滝澤工務店に入社してから社長になるまでは、社長という立場上の責任を負うプレッシャーを感じていました。責任に実力が追いついていないことに葛藤していたのです。青年会議所で様々な経営者の姿を見て、利益以外の会社に対する奉仕のあり方や、仕事に対する価値観を考えたこと、さらに一級建築士の資格を取ったことで、プレッシャーは少しずつ克服していきました。35歳から仕事を継ぐ40歳までの5年間、社長になるまでの準備に向き合おうと決めました。会社を継ぐ直前の3年間は社長室で、父の社長としての振る舞いを見て学びました。視野の広さと細やかさを併せ持ち、多くの決断を速く的確に行う大切さを知りました。社員がより主体性を発揮できる環境づくりという、会社の課題に向き合おうと決めたのもこの時です。この5年間で経験したことが大きな意識変化に繋がったと思います。

依頼は断らず、速くて上手い仕事に挑戦し続ける

相談いただくお仕事は断らないという精神は、祖父の代から脈々と引き継いでおり、会社のアイデンティティになっています。個人住宅の新築やリフォーム、松本城黒門・太鼓門や旧制松本高校の耐震工事、山小屋の工事など、幅広い建築に携わってきました。デザインの型もあえて決めておらず、どうしたらよりよいものづくりができるのか、依頼のあった建築一つ一つに対して会社一丸となって考えます。他ではできない建築に挑戦でき、建築を突き詰めるために様々なチャレンジができるのは、社員のやりがいにも繋がっていると感じます。

仕事によって異なる準備と実践の経験を積むことができるのは、会社の強みである社員大工の成長も後押しします。例えば文化財の工事は保全が目的なので、可能な限り元の形を残さなければなりません。個人住宅のリフォームは、より住みやすくするための変化を考えます。山小屋の工事では、資材を運ぶのに時間とコストがかかるため、万全の準備や現地での材料転用の機転が重要になります。多様な局面に対応する経験を重ね、社員大工はよりよい仕事ができるようになっていきます。私は目標を数値にして見える化することで、社員大工の成長を促してきました。建築業界の人手不足が問題となる中、社員大工がいないと、他社との調整で多忙な外注先に頼むことになり、迅速に信頼の置ける仕事をすることが益々難しくなります。社員大工がものづくりを突き詰められる環境づくりは、今後さらに重要になると思います。

まずはやってみて楽しさを感じてほしい

学生が仕事を考える上で、「やってみたい」気持ちは大切です。入社後必ずしも好きなことを仕事にできるとは限りません。初めは好きか分からなくても、やってみる中で楽しめるようになれば、仕事のやりがいに繋がると思います。滝澤工務店の社員も、他ではできないことにものづくりとして挑戦できることを楽しんでいるからこそ、やりがいを感じてもらっているのだと思います。論語にある知好楽、物事の知識のある人より好きな人のほうが、好きな人より楽しむ人のほうが上達しやすい、という考え方と同じです。

あとは便利な道具に対し、何のために使うのかを意識するようにすると、社会人になってからも役に立ちます。建築の道具も進化していますが、なんとなく使うのと、既存の道具のどこを改善するために作られたのかを意識して使うのとでは、使いこなせるようになるスピードが違います。私自身も滝澤工務店のことを学生に知ってもらう際には、オンラインを使うのではなく実際に学校を訪問しコミュニケーションをとることで、会社が持つものづくりへの想いがより伝わりやすくなっていると実感しています。

「人のために尽くす」生き様の根底に社是がある

父から受け継いだ社是「誠心誠意・創意工夫」は、ものづくりを通して人に貢献する、私自身や会社の有様の根底にあります。私にとって、今の仕事が好きか嫌いかは分かりません。死ぬ時に「良かった」と思えれば、それが好きだったということだと人から教えてもらってからは、好きな仕事かどうかを意識することはなくなりました。私が今座右の銘としているのは「人のために尽くす」ということです。私は社長という、お客様にも社員にも貢献できる立場にいます。松本市内の保育園に木の端材で作った積み木を寄付し始めたように、地域社会にも貢献できます。今後も社員の主体性や成長を後押しし、よりよいものづくりを目指し一丸となれる環境を整えることで、3代目社長として滝澤工務店の組織づくりに挑戦し続けたいです。

滝澤 顕
滝澤 顕
AKIRATAKIZAWA
1978年長野県生まれ。日本大学工学部卒業。2005年、株式会社滝澤工務店へ入社。2019年3代目代表取締役に就任。
株式会社 滝澤工務店

〒390-1131 長野県松本市今井松本道7155-74

TEL:0263-57-2196

FAX:0263-86-6124

3代目 40代社長 中信 創業50年以上 地域密着型 売上10億円以上 建設 社員数10人以上 若手活躍

本記事のインタビュアー

GUGENではインタビュアーとして活動していただける学生を募集しています。
長期インターン募集中! GUGEN - 信州CEOインタビューメディア 長期インターン募集中! GUGEN - 信州CEOインタビューメディア