山上 浩明

株式会社 山翠舎
山上 浩明
HIROAKIYAMAKAMI

成長したい人々へチャンスの場を提供し、古木の魅力を伝える空間づくりに挑戦する社長
掲載日2024.1.5

山翠舎 山上浩明社長「古木を通して人と人とをつないでいく」【長野市】

1930年創業で、2030年には創業100年を迎える山翠舎は、設計・施工の会社です。山翠舎の山上浩明社長は、古民家から古木を収集・保管・整備するだけでなく、設計・施工を中心とした古木の利活用を促進するアップサイクルな提案を続けることで事業の領域を広げています。山翠舎のビジョンは、地域に根付いた循環型社会を実現すること。そして社長のビジョンは、より多くの方を幸せにする。その想いと背景を伺いました。

インタビュアー
酒井 瞳

古木の魅力と価値: 新事業で伝える持続可能な社会の実現への取り組み

目次

行動で変わる

“未来は自分の行動で変わる”という信念を持っています。過去や他人を変えることはできないかもしれませんが、未来や自分自身の運命は自らの手で変えることができます。私たちは後悔することがあるかもしれませんが、その後悔を前向きに捉え、未来を書き換えるチャンスとみなすことで、何度でも新たなスタートを切ることができると信じています。

高校時代からの営業力

高校1年生のとき、私はロボット相撲コンテストに参加するため、応用物理班に入りました。コンテストには「学生の部」と「一般の部」が存在し、賞金が出るのは一般の部だけでしたが、我々は賞金獲得を目指して、一般の部での参加を選びました。一般の部の対戦相手には知識や経験、財力にも優る大学生や社会人も含まれていたため、勝てないということがわかりました。しかし、学生の勢いと高みを目指したいという気持ちから、我々は受賞の可能性がある特別賞を目指すことに決めました。

コンテストのルールは、ロボットのサイズが縦横20cm×20cm、重さ3kgまで、そして高さは無制限というものでした。我々は、この高さ無制限のルールを最大限に利用して、金鶏参號と名付けた非常に背の高いロボットを作成しました。試合開始当初には、その高さを利用して相手のロボットを倒すという独自アプローチ戦術が見事にはまり、審査員に対する積極的アピールも功を奏し、狙い通り特別賞を受賞することができました。

そのほかにも応用物理班では、文化祭の際に1冊100円の有料会報誌を制作し、その広告枠を地域の企業へ営業する活動を行いました。結果、冊数は少ないながらも、利益を出すことができました。当時はあまり感じていませんでしたが、今思えば高校時代のこれらの経験が営業力を身につけることにつながったのではないかと思っています。

鍛えられた発想力

社会人になって、自分の周りの人たちから発想力があるねと言われることが増えました。施工会社を営んでいたため、廃棄物の積替保管施設が家の前にありました。店舗の解体工事も請け負っており、その時の廃棄物が家の前にあったため、面白いものはないかなと毎日物色をしていました。

今から思えば、捨てるものからビジネスをつくるきっかけがこのときからあったのだと思います。そのときは、「捨てるものから遊びをつくる」ですね。幼少期にブロックで遊んでいたことや、家の前にあった店舗の工場から捨てられたパーツで遊んでいた経験が私の発想力を磨いたのだと考えています。そのため、小学生の時は発明家になりたいと思っていました。

山上浩明 (著) ‶捨てるもの″からビジネスをつくる: 失われる古民家が循環するサステナブルな経済のしくみ

FEAT.spaceを始めたきっかけ

FEAT.spaceと名付けたこの施設のロゴに、ActivationというキーワードでACTIVATION HUBというサブタイトルをつけているのは、多様な人との出会いや繋がりが、自然と活性化することを意図して創られたこの施設を、想いをかたちにする第一歩を踏み出す場所にしたいという想いが込められています。

大学卒業から20年後、私は仕事をしながら大学院に入学し、そこで2年間の切磋琢磨の時間を過ごしました。20年前の大学生時代に感じた、利害関係のない純粋な学生同士の絆を再び感じることができましたし、授業後の飲み会では友人たちと心からの意見を交換し、「こうした方がいい」「ああした方がいい」と真摯にアドバイスし合いました。社会人になると、利害関係を伴った取引関係が生まれ、このような本音での意見交換が難しくなります。

私にとって、利害関係を超えた真心からのアドバイスは非常に心地良く、有益でした。その結果、プレゼンテーションのスキルが向上し、事業の質も格段にアップしたように思います。大学院生活での純粋な関係やアドバイスの価値を、地元長野でも感じてもらえるような場所を作りたいという想いが、FEAT.spaceを立ち上げるきっかけとなりました。

Featuringしていきたい

施設内には大きなディスプレイがあるので、プレゼンやピッチをするのが楽しくなる仕組みがあります。

2023年秋、古木を使った設計・施工事業が中心の弊社は、新業態「FEAT.space」をイベント開催に特化した形でリニューアル・オープン予定です。”FEAT”は”featuring”の略で、英語で特定の特色を際立たせるという意味を持ちます。このイベントスペースは、企業の方々だけでなく、リアルな空間で発信する場を求めている地域の学生や、特定の技能を持った方々、例えば楽器の演奏者などにも特別に提供したいと考えています。その他にも、一緒にゲームをするなどといった場所にも最適です。

さらに、将来的にはこちらのスペースを、才能ある利用者とそれをサポートしたい企業を結びつけるプラットフォームにしていきたいです。目指すのは、FEAT.spaceでの出会いを通じて新しいビジネスの機会が生まれ、利用者がさらにステップアップできる場とすることです。

自然素材の魅力

「FEAT.space」は、社会問題の解決に繋がるスペースとして設計されています。具体的には、空き家問題を解消する役割を担い、SDGsの推進地としての機能も果たしたいと考えています。特に、施設内外には柱などに古木を一部用いており、これは海外の訪問者たちにも評価されており、もっと多くの日本の皆様にも古木の持つ魅力を深く知っていただきたいと思っています。

またFEAT.spaceには、古木以外にも本来捨てられていたかもしれないものが多く再活用されています。東京・日本橋浜町の“T-HOUSE New Balance”でも使われている川越の蔵で使われていた土壁や、数十年以上前のヨーロッパの中古家具、タペストリーとして使われている川島織物のアンティーク・サンプル、明治・大正期の古書があったりと、様々な時代のものが時空を超えて配置されています。利用者が心地よさを感じる背景に、それぞれがストーリーを持つ自然素材が多用されていることを知り、その温かみのある魅力を感じていただければと考えています。

山上 浩明
山上 浩明
HIROAKIYAMAKAMI
1977年長野県長野市生まれ。東京理科大学卒業後、2000年、ソフトバンクに営業として入社。ネットワーク機器の販売で社長賞を受賞。2006年、(株)山翠舎に入社し、従来の「工務店」としての枠を飛び越え、空き家古民家の社会問題解消を目指し「古民家を活用した事業」に特化したビジネスモデルへシフト。2012年に代表取締役社長に就任。2018年「スタートアップアントレプレナー表彰プログラム"EOY JapanStartup Award 2018"(主催:EY Japan)」の甲信越代表に選出。2019年「FSC認証」において、古木で世界初の認証を取得。2020年「古民家・古木サーキュラー・エコノミー」でグッドデザイン賞(審査委員 井上裕太氏の選んだ一品)・ウッドデザイン賞(奨励賞【審査委員長賞】)受賞。2021年に長野県の「信州SDGsアワード2021」 受賞。2023年、欧州最大級のインテリア・デザイン見本市「メゾン・エ・オブジェ」出展、キッザニア東京「未来を変える!アクションラリー」スポンサーに参画。<メディア実績>2021年「応援! 日本経済 がっちりマンデー!!」(TBSテレビ系列)に出演。2022年「COOL JAPAN~発掘!かっこいいニッポン」(NHK BS)に出演。2023年「ガイアの夜明け」(テレビ東京系列)に出演など、各種メディアで紹介されている。同年、‶捨てるもの″からビジネスをつくる(あさ出版)を出版した。
株式会社 山翠舎

住所:〒381-0022

長野県長野市大字大豆島4349-10

TEL:026-222-2211

会社ウェブサイト https://www.sansui-sha.co.jp/

3代目 40代社長 SDGs企業 スタートアップ 創業50年以上 北信 地域密着型 売上10億円以上 女性が活躍 建設 海外展開 社員数10人以上 若手活躍

本記事のインタビュアー

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