花と緑で創り出す未来のライフスタイル
弊社の企業理念は「お花のある生活というライフスタイルを提案することで、より多くの人々に幸福感を提供していきます」です。 私が経営者となってから、色々な場面で我々が提供しているのは、単なる商品のお花ではなく、お花のある時間だと感じるようになりました。 お客様だけではなく、従業員の仲間たち、生産者の方々といった我々のビジネスに関わる関係者の皆様に幅広く、「お花のある時間の価値」を伝えていくのが最大の使命だと思っています。 お花のある時間は、人間の本能的な欲求ではないかと心から思っていますし、デジタル社会になって人とのつながりが希薄になったと言われる今だからこそ、人と人とが接するからこそ生まれる、人の温もりや優しさ、ありがたさは、人間には絶対に必要なもので、その瞬間を演出できるのが「お花」という存在だと私は思っています。
SEから花屋への転身
私には妹がいます。
子供の頃から妹は家業を継ぎたいと言っていました。
一方で、私は感性的な分野よりも理論的な分野に興味があり、理系の大学に進学し、2002年に当時職業として人気の高かったシステムエンジニア(SE)になりました。
4年間のサラリーマン生活は非常に楽しかったのですが、家業が困難に直面し、妹も継ぐ自信を失ったため、急遽私が家に戻ることになりました。
正直に言うと、SEの仕事を続けたかったですが、転職することを余儀なくされました。
初めてのマネジメントエピソード
家業に就職し、私が最初に担当した仕事は、会社の再建でした。
そのため、段階を踏んで経営者としてのスキルを身につける余地はありませんでしたね。当時は花に関する知識も一切持っておらず、がむしゃらにただただ仕事をしていました。
サラリーマン経験が短くマネジメント経験の乏しかった私が、急に50人ほどの部下を持つことになり、最初は従業員が次々に辞めていく状況が続きました。社員から話しかけられる度に退職の話しとなり、毎月毎日ハローワークにお世話になる日々。
率直に言うと「なぜ家業に戻ってきてしまったんだ…」と後悔するほど、全く仕事に楽しさを感じることはありませんでしたね。
経営者としての覚悟を決めたタイミング
先代の社長である母は現場主義者で、家業に戻ってから数年はほぼ私はマネジメント業務に専念していました。いわゆる一般的な社長業は私が担うことが多く、業績が振るわない中、母と経営に関する意見の食い違いが頻繁に起きましたね。
トップ同士の方針が食い違えば当然現場は混乱し、このままでは会社が上向くことは無いと感じ、私に任せて欲しいと母に伝えました。結果、私が社長を引き継いだのは33歳のときです。
しかしながら、それ以降も会社の成績は振るわず、社内からも社外からも批判の目を感じる日々でした。当時は新規事業も失敗し、完全に自信を失っていたと思います。
2019年秋には本社近くの千曲川堤防が決壊する災害が発生、長野市はイベント等自粛ムードになりました。その直後に新型コロナウィルス感染症が広がり、売上はまさにどん底に陥りました。
人間とことん追い込まれて、大きく成長できる、とはよく言ったもので、そのとき始めて本気で真剣に真正面から経営と向き合うことができました。今思えば、それが本当の意味で経営者になった瞬断だったと感じています。
地域密着・地域一番店戦略を大切にしているのは、なぜでしょうか
理由は2つあります。
1つは、お陰様で母の代で地域での知名度は高まっており、私自身、インターネットを中心としたお花の販売にやりがいを見いだせず、いまある資産を最大限活用し、より一層高めていくことが、経営効率的に正しいと判断しました。
もう1つは、私が経営者として未熟なときでも、従業員の仲間たちや、地域の経営者の方々に助けていただき、そのつながりをもっと大切にするビジネスをしたい、地域の皆様と「顔の見える」商売がしたい、という想いが強くなったことです。
お花は人と人とを結ぶもの、人の感情に訴えかけるもの、なのでリアリティのある商売にこだわっていきたい、逆にデジタルでの接遇が増える世の中にあって、人の接客が重視される商売が減っている中で、花屋だからこそできる「接客の価値」を高めていきたい、と強く思っていますし、その点が特に最近お客様に評価されていると感じています。
従業員の自己実現を叶える取り組み
冒頭でお伝えした通り、お客様に対してお花を通じて価値ある時間を届けていくことも大切ですが、お客様に対するサービスレベルの向上と同じぐらい、お花を扱う従業員たちの幸福感の提供に、私は相当な労力を割いています。
そのためにも、私がヌボー生花店という組織で特に大切にしていることは、従業員の個々の自己効力感を高め、さらにチームとしての組織効力感を高めていくことです。 従業員個々が、この組織に所属し成長する中で、私だったらできるかもしれないという、「自分の可能性を信じられる力(=自己効力感)」を育んでほしいと願っています。 私も学生時代、そして未熟だった経営者時代、自分を愛し、認め、失敗を許容することの大切さを痛感しました。 ヌボー生花店に入社してくれる仲間たちはみな、人間的に魅力あふれる人たちです。 そんな次代を生き抜く若者たちが様々なフィールドで活躍できるよう、ぜひヌボー生花店という「場」を活用して、大きく成長してほしいと思っています。
そのためにも、仲間同士が互いに認め合い、褒め合い、互いの改善点を指摘しあう環境が必要ですし、具体的なフィードバックのための仕組みが社内にはあります。 仲間が仲間の成長を真剣に考え、仲間同士が刺激しあい高め合う、結果チームとして組織として、私たちは成長できる、挑戦できる、やり遂げられる、という文化をつくっていくことを、仲間たちに私は約束しています。
社員さんとのコミュニケーションで大切にされていること
まずは人として、役職に関係なく、人と人とのコミュニケーションであることは大前提として意識しています、偉いとか、経験があるとか、社長だとか、そういうのは建前でしかなく、社員とコミュニケーションするうえで、そんなことは関係ない、と私は考えています。
そのうえで、女性が大半の会社ですから、女性のライフステージの変化は常に意識しながら会話していますね。私は男性なので、すべてを理解できるわけではありませんが、日々の体調にも配慮は必要ですし、本人の先にいる家族も常に意識はします。
私は女性の多い会社の経営者だからこそのやりがいを感じています。子供にとっては母親が全て、家族においても女性は支柱です。女性が家族にポジティブな影響を与えられたら、その家族への良い影響は計り知れません。
先程お話した通り、だからこそ、女性社員の人間力を高めるための教育、そして成長を常に意識しています。社員の可能性を信じて、良いところばかりではなくきちんと課題も伝えることを意識しています。
成長速度は人それぞれですし、壁にぶつかることもあると思いますが、その人が次のステップに進むための機会を、仕事を通じて提供していきたい。壁にぶつかることも必要です。私は常に本人の成長にフォーカスして、コミュニケーションを取ることを心がけています。
仕事と幸せの結びつき
仕事をする意義とは、私は金銭の獲得と自己成長だと思っています。
生々しい話ですけど、お金を獲得する為だけの仕事だと面白くないし、それだけでは仕事の価値は見出せない。
仕事って修行の場でもあるので、自己成長や人間力を高める場所であって欲しい。
五段階欲求と良く言いますが、一歩二歩と自己成長を感じられた時に、一番上の自己実現の欲求が満たされて、結果的に幸せを感じるられると私は信じています。
花屋ながら生産地に足繁く通い、生産地と一体となることで、全国の一流生産者の花材が揃う花屋を目指す。